自立を控えた児童養護施設の高校生の不安と家族の葛藤


児童養護施設でくらす子どもの中には、家庭に復帰する場合もありますが、子ども本人の希望や家族の状況によっては、18歳を迎え、施設から社会に巣立っていく子どもも多くいます。

 

子ども達は高校卒業と同時に、さまざまな場面での自立をしなくてはいけません。その時を、いつからどのように意識し、卒園後の選択をどのような心持ちで迎えているのかについて見ていきます。

 

 施設から卒園することをイメージし始める中学生
施設にやってくる理由や背景もさまざまですが、施設で暮らし始めてからも子どもたちを取り巻く環境は実にさまざまな形があります。

 

家族と外出したり、夏休みなど長い休暇に入ると家に外泊する子どもがいます。同時に、全く家族との交流がなく、泊まりに行く家がない子もいます。

 

まったく交流がない、年齢の小さな子どもたちの中には、家族と交流する子どもたちを見てうらやましさ寂しさ同時に心の中に存在させています。

 

また、「いつかお父さんやお母さんが迎えに来てくれるかもしれない」、「自分もいつかおうちに行ける」とひそかに期待を寄せています。

 

家族と交流がある子の中には実際に家庭に復帰していく子どももいますが、中には親の都合で交流が中断したり、交流していても関係性に変化や深まりが見られない場合があります。たいていは親の仕事や居所が安定しないという、親の都合によるものがほとんどです。

 

中学生くらいに差しかかると、子どもたちは自分の置かれている状況を理解し始めます。自分より年上の子ども達が自立していく姿を何人も見ていますし、家に帰っていく子どもたちがどのような状況で帰っていくかも、子どもなりによく観察しています。

 

子ども同士の会話の中で、大人が知らないような情報が交換されていることもあります。子どもが大人が考えているよりもはるかに、家に帰ること、帰れないことについての手段や方法について知っています。

 

そして児童相談所や施設の職員が詳しく説明をしなくても、「家に帰れるかもしれない」という期待が、親の都合によって繰り返し裏切られていくと、次第に「もう家には帰れないのだな」と察します。

 

 施設からの自立を考えることの不安
施設でくらしていると、学校や毎日の生活を送ることが優先されます。また子どもたちが日常的に将来や家族への思いを口にすることはありません。

 

そのため、彼らがあまり関心がなかったり、触れてほしくない話題だと感じているかというと真逆です。むしろ家族や将来のことは毎日のように考え、彼らなりに思い悩んでいます。

 

施設から自立するということは、施設を退園したその日からどこかで一人で暮らすことを意味します。そして家賃、生活費、学費、交友費といった家計や、食事や学校、仕事といった生活もひとりで行わなければなりません。

 

家庭に帰ることができずに施設から卒園する子のほとんどが、卒園時に頼ることができる保護者や親類はいません。

 

中学生くらいから何となく施設からの自立を考え始め、高校生に入ればそれは決定的な事実となり、残りの3年間でやるべきことが決まってきます。退園する時点で必要な費用を稼ぐためのアルバイトをしながら、就職や進学についても決めていかなくてはいけません。

 

中には進学を希望していても、経済的な理由で断念する子どももいます。また、入学時から1年程度は可能でも、その先の数年の学費と生活費を自力でまかなうことを考えると、とても進学はできないとあきらめる場合もあります。

 

就職と決めていても、自分がどう生きていきたいのか、何をしたいのかを考えることができません。そこにはまだ高校生という年齢もあるうえに、常に不安と恐れが付きまとっているため、冷静に考えることができないという背景もあるでしょう

 

 不安と現実のはざまで
将来への不安を抱えながら、同時に自分の過去や家族とも直面します。

 

「自分の親がもっとしっかりしていたら」、「もっと普通の家の子に生まれていたら」と、自分の不運を恨み、嫌悪感や不安から逃げるように生活が乱れていく子も少なくありません。

 

しかし、元をたどれば子どもたちの責任ではありません。しかし、子どもたちは自身が受けた傷やその後の影響を背負って生きていかなければなりません。

 

現在、そのような子どもたちの自立を支援するために、さまざまな団体が立ち上がっています。就労を支援してくれたり、自立後に生活が苦しくなってしまったときの駆け込み寺のような場所も増えてきました。

 

自立というと希望ばかりに目が向きがちです。しかし、彼らは「自分がどうしたいのか」すら考える余裕がありません。

 

そこに寄り添う大人たちや社会がが、彼らの中に同時に存在している不安やおそれがあるということを理解し、目を向けることで、彼らが「もう一度頑張ってみよう」、「まだまだやれることがある」という力に変わっていきます。

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