乳児期の子どもと親のかかわりの質が、子どもの育ちを大きく変える

 

「三つ子の魂百まで」ということわざがあります。人は、3歳くらいまでに置かれていた環境や教えられたこと、かかわり方によって基本が作られ、100歳になっても変わらないという意味です。

 

すなわちしつけ、教育といった影響は、生まれてから3年間で人格や人生を作るということです。

 

私は児童養護施設で、実にさまざまな環境下で育った子どもたちと生活の場をともにしてきました。その経験から、小さな子どもでも、1−2歳くらいまでの間にすでに人格は出来上がっていることを目の当たりにしてきました。

 

ここでは、いくつかの事例を取り上げながら、乳児期の子どもにどのような環境が必要か、私たち大人が知っておくべきことについて考えていきます。

 

 ケース1 Yちゃん 3歳
児童養護施設の職員は、Yちゃんのコミュニケーションに疑問を感じていました。職員がYちゃんから「これってなぁに?」と聞かれて答えようとしたり、答えている途中に、Yちゃんはすでに違うことを話していたり、どこかに行ってしまったりします。質問に答えがなくても、Yちゃんは特に気にしていないようなのです。

 

また、場面が変わるたびに「次の職員さんはだぁれ?」と尋ねます。事前に「○時にだれだれさんが来るよ」と伝えても、確認を何度もします。

 

このようなYちゃんのことを、職員は「コミュニケーションが一方通行で、自分が取り残された感じがする」と言います。職員間でYちゃんの生い立ちを振り返り、3歳にしてこのコミュニケーションはどこから学んだのかを考えることにしました。

 

Yちゃんは1歳半のときに乳児院に預けられ、3歳を過ぎて児童養護施設にやってきました。父親は不明、母親はアルコールや異性に依存しやすく、精神的にも不安定な人です。

 

Yちゃんが生まれてしばらくは地域の支援機関が母親をサポートしながら家で育てていましたが、まだ小さなYちゃんを育てるには不適切な要因が多く、乳児院に預けることになりました。

 

乳児院に預けてからも、母親は毎日のようにYちゃんに会いに行きました。時折、お酒を飲んで来たり、時間を間違えたりと不安定な様子も見られたため、面会時間は短く、なるべく施設の職員がそばにいる場所で行っていました。

 

家にいるとき母親の都合で昼夜関係なくさまざまな場所に連れていたこと、自宅にもアルコールを介した友人や異性が頻繁に、不規則に出入りしていたようでした。

 

乳児院の面会も母の心身の調子によって抱っこをしてもらえたり(もらえなかったり)、遊んでもらえたり(もらえなかったり)していたようです。

 

このような経過を見ても、Yちゃんが中心で回る生活ではなく、母親の都合や感情によって環境が変わり、その場その場で違う扱われ方をして育ってきたことが見て取れます。

 

Yちゃんがおなかが空いて泣いていても放っておかれたことは一度や二度ではなかったでしょうし、眠くても静かに添い寝をしてもらったことなどほとんどなかったでしょう。

 

 親(大人)の都合を優先しない
Yちゃんの事例からわかることは、生まれてから間もなく、どのような環境で育てられていたかはその後に大きな影響を与えるということです。子どもは与えられたものしか身につけることができません。

 

Yちゃんは、親の一方通行のコミュニケーションばかり与えられてきたため、それしか知りません。出したサインを受け止めて、理解してもらい、自分が求めていることに反応してもらう、という体験が抜け落ちています。

 

サインを出していても、受け止めてもらうことなく、どこに行ったのかもわからず、自分の中で「なかったこと」として納めるか、次のことに興味を持つしかなかったのでしょう。

 

場面によって職員が変わることを気にするのは、場面によって家にいる人や、置かれる場所が変わってきたことを意味します。次の予測が立たない不安な気持ちを確認する作業でもあるでしょう。

 

生まれて間もない子どもを育てることは、親(大人)の都合を優先してはできません。自分の思い通りにいかず、イライラすることもあるでしょう。しかし、大人の都合で育てられた子どもは、その後の人生や人格に大きなダメージを受けていきます。

 

親が守るべき最低限のことは、子どもが安心できる環境を整えること子どもが求めていることに応える努力をすること、この二つに尽きます。

 

 

安定した環境とは、同じ家に住むということではありません。子どもにとって、どのような環境が落ち着いて過ごせるのかを考え、提供することです。

 

子どもが求めていることに応える努力をしていますか。なぜ泣いているのか、なぜ怒っているのか、親(大人)であるあなたに何を求めているのかを考えていますか。

 

「〜だから泣いている」とあなたが決めつけてはいけません。なぜ、の答えは必ず子どもが持っています。

 

将来、子どもが大人になったとき、どのような人であってほしいと願いますか。

 

その願いを叶えるチャンスは、親であるあなたがカギを握っています。「どのような人であってほしい」という人にあなたがなることから、子どもの人生が始まります。

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