養育者が変更することによる子どもの内面の揺らぎと反応〜そのとき職員はどうするか〜

2歳から18歳までの子どもたちを預かることができる児童養護施設は、他の児童福祉施設に比べても、子どもがそこで過ごす時間はもっとも長く、また成長も著しい変化を見せる時期でもあります。

 

最も長い子どもは約16年間を過ごし、短くても最低1年は施設にいることがほとんどです。数日や数か月単位で家庭に帰ることができればよいのですが、そこにはさまざまな事情が複雑に絡んでいるため、最低でも年単位の時間がかかってしまいます。

 

年単位で施設にいると、実にさまざまな出来事があります。その一つに、養育者の変更ということが必ずと言ってよいほど起こります。ここで言う養育者とは、子どもが暮らしの中で一番身近に過ごす人、担当職員です。

 

家庭で傷ついた子ども達が暮らし、育つ児童養護施設では、なるべく養育者の変更がないように工夫や配慮をしていますが、避けることができない状況もあります。養育者の個人的都合(結婚、妊娠、出産、育児、介護など)による退職、施設の構成変更に伴う異動などがあるためです。

 

散々大人に裏切られ、傷つけられた子どもたちは、大人への不信感や恐怖感を抱いています。彼らが、安定した生活を繰り返す中で、ようやく人に対して安心感を持てるようになったところで起こる養育者の変更は、こころをえぐるような出来事となりえます。

 

同じようなことは、親の離婚や再婚にも起こり得ると言えるでしょう。養育者が変わるとき、子どもにはどのようなことが起こるのかについて見ていきます。

 

 被虐待による傷つきを行動で表現する小さな子どもたち
不安定になるという表現が、子どもの内面を語るときに最もなじみがあり、適切なのかもしれません。生活をともにしていると、その言葉の持つ意味の重みや深さを目の当たりにします。

 

家庭で傷ついたあとに施設に来て、少しずつ安心を獲得し、こころを開けるようになった人がいなくなるという体験は、私たち大人が想像する以上に過酷な現実です。しかし、意外にも子どもの反応はさらりとしています。

 

表面的には、揺れている内面を見せようとはしません。それは新しく担当になった人への信頼感や安心感を築けていないということもあります。また、積み重ねた人との信頼や関係の取りかたがリセットされてしまうような体験にもなります。特に年齢の小さな子どもは、入所当初に見せていたような距離感や関係性を行動で再現することで、それを表現します。

 

父親から暴言や暴力を受けてきた小学生の女の子は、施設に来たころ、全身にトゲをまとっているような反応をしていました。大人が声をかければ「あっち行け!」、「お前なんかいらない」と暴言を吐いていました。

 

施設の生活になじみ、少しずつトゲトゲしい反応が減ってきたときに、担当者が退職となりました。新しい職員に対して再び、同じような反応を示します。すると、その子の育ちや背景をうまくつかみきれていない職員は、暴言に対して注意をしてしまうことがあります。

 

初対面の大人にどのように距離を取ってよいのか、甘えたらよいのかわからずに、家庭で学習してきた人とのかかわり方で、「あっち行け!」という言葉を発したのでしょう。それを注意されてしまうのは、子どもにとっては深い傷つきとなり、大人への不信感を強めてしまいます。

 

 自分を語ることで、大人を試す中高生
高校生年齢の子ども達も、一見会話やコミュニケーションは成立しているように見えますが、実は「この職員は本当に心を開けるような人か」を試していることがあります。試し行動の一つに、自分の過去を語ることがあります。自分が家でされたことがどれだけひどかったか、自分の親がどれだけひどい人だったかを話し、相手の反応を伺います。

 

年齢の若い職員は、このような話をされるとどのように聞いてよいのか、あるいは受け止められずに揺れてしまうこともあります。子どもはそれを見抜きます。自分の傷ついた内面を語ることで、相手が安心の置ける人かどうか、これから信頼を築いていけそうな人かということを深く観察しています。

 

 施設はなにができるか
2歳で施設にきた子どもが18歳になるまで、同じ担当者とともに暮らすことが理想ですが、3年から5年ごとに変更があるのが現実です。そのたびに子どもは「またか……」と肩を落とし、前述したような試し行動を繰り返さなくてはいけません。

 

それは自分の人生が定期的に分断されるような体験であり、そのたびに自分という人間を知ってもらうために何らかの努力が必要となります。

 

職員は、このような子どもへの影響を理解したうえで、さまざまな判断をしていくことが求められます。新しく担当する職員への丁寧な引き継ぎや、子どもの背景を十分に理解したうえで担当になることは必要な作業です。

 

そして最も大切なのが「子どもの暮らしの中に入らせていただく」という姿勢です。施設は子どもが主役の場所です。そこにくらし、育ち続けてきた子どもの今という点ではなく、過去にどのような人たちとどのようなくらしをしてきたのかを想像できるセンスも必要となります。

 

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