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虐待を受けた子どもが回復するとき〜住生活〜

虐待を受けてきた子どもたちは、どのような住環境で育ったのでしょうか。私たちが劣悪だと思うような環境でも、その子にとっては家=居場所です。家から離れることは、苦痛やさみしさ、悲しみが複雑に絡まります。

 

住環境というと、家や部屋の構造やレイアウトを思い浮かべる人が多いでしょう。確かにその通りですが、ここではもっと細やかな部分、生活のにおいや音、空気といったことについても触れていきます。

 

慣れ親しんだ環境から離れ、新しい家に移るとき、子どもはなにを思うのでしょうか。そして、虐待からどのように回復していくのか、施設職員の取り組みとともに見ていきます。

 

 「やっぱり家がいい、でも毎日ごはんが食べられて、みんながいる施設もいい」
Sは父親と暮らしていましたが、父親の病気が悪化したため入院することになり、幼稚園の年長のときに児童養護施設にやってきました。

 

Sが暮らすことになった「家」は小学生、中学生、高校生のお姉さんたちが10人くらいいて、職員が2、3人います。部屋は、Sだけの個室が与えられベッドや机まであります。

 

家にいたころ、父親が病気で寝たきりだったため、訪問看護のヘルパーさんが来ない日はSが食事の準備や自分のことをしていました。小さなSにできることは限られています。掃除や洗濯も行き届きません。食事も、冷凍食品やレトルト食品を温めるのが精いっぱいです。

 

家は経済的にとても貧しかったため、冷暖房器具はなく、壊れたものを修理するお金もありませんでした。Sは、病気で寝ている父の隣に小さな布団を敷き、冬は寒さをしのいでくるまるようにして寝ていました。

 

一方で、施設の部屋にはエアコンがついていて、職員さんが温かい食事やおやつを作ってくれます。お風呂も毎日入ることができ、ベッドもあります。冬の寒さに凍えることもありませんし、洋服も周りの子が着るような新しいものを着ることができます。Sがずっと求めていた生活やものがそこにはあります。

 

満たされた思いの毎日でしたが、Sはふと、こころの奥で風が吹き抜けていることに気づきます。病気で寝ているお父さんに会いたくなり、貧しかった家が懐かしくなります。

 

病気だけれど隣でお父さんが寝ているのは、Sにとっては安心でした。あた、いろんなものが整っていない不便な家でしたが、それがSの「家」でした。前の家を思い出すと、時々、Sはしくしく涙を流します。

 

そのことを知った職員は、いろいろと考えた結果、父親の病院と連絡を取り、外泊許可が降りたときに合わせて、Sと以前住んでいた家に遊びに行くことにします。このようなことを3か月に1回くらい重ねていきます。Sは「家に行きたいと思ったときに行ける」と確信したのか、施設でも安心してのびのびとくらしています。

 

 なじんだものへの思いをたいせつにする
Sのような子ばかりではありません。毎日のくらしというのは、私たちの五感に染みついているものです。新しい環境に慣れることはできても、それまでなじんできたものを忘れることはできません。

 

子どもの環境への適応能力は、大人の想像を超える高さです。新しい環境に慣れて元気にやっているように見えても、こころは整理できないものがぐちゃぐちゃに散らばっていて混乱しています。

 

施設で子どもたちに提供している環境は、一般的な環境です。キレイに整備され、物がなくて困ることもない生活を提供することは、最低限の保障として必要なことです。

 

一方で、子どもたちが家から施設に移るとき、子どもたちの心の中にある、なじんだものへの思いが取り残されないように配慮する必要もあります。
 
施設職員は、子ども達が生活のあらゆる場面で発するさまざまなサインを拾い上げ、それが意味することを考え、その子が安心して生活できるためにはなにが提供できるかを考えながら日々支援を行っています。

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