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虐待を受けた子どもが回復するとき〜過去を表現する〜

虐待を受けた傷つきは、日常生活のあらゆる場面で表現されます。児童福祉施設の職員は、戸惑いながらもその気持ちに寄り添います。また、こころの揺れが、子どもの生活リズムや周囲に影響しすぎないよう配慮しながら対応しています。

 

施設には、こころの傷つきに寄り添う心理療法士という職員がいます。いわゆる、カウンセリングやプレイセラピーといった心理療法を通して、安心して傷つきを表現する場を提供し、回復を目指す場です。施設によって設備は異なりますが、相談室やプレイルーム、箱庭療法室などで心理療法が行われます。

 

ここでは、心理療法で子どもが過去を表現し、回復していくプロセスを、事例を通して見ていきます。

 

 ケース〜I子 14歳〜
I子は、小学校5年生の時に施設にやってきました。理由は、母親と継父からの虐待です。母親は、I子が小学校1年生の時に継父と再婚し、その間に妹が生まれたときから虐待が始まりました。

 

主に虐待をしていたのは継父で、母親はそれを止めることができませんでした。本当の父親とは、在宅中も面会をしてきているため、交流はあります。

 

施設にきてからまもなく、週1回1時間程度の心理療法が始まります。I子は、両親からの暴力を受けないように、またエスカレートしないように身をまもろうと、「良い子」をしてきました。

 

そのため施設でも、いつもニコニコして、誰に対しても従います。しかし、どこか一線を引いたような反応を示します。心理療法士は、I子の大人への根深い不信感を重く受け止めました。

 

I子は施設にきてから、母親と月1回の手紙のやり取りをすると同時に、父親とも面会を続けています。心理療法士は担当者と連携し、その動向も見守ります。

 

職員は、母親から手紙が届いたあとや、父親との面会後に、I子がイライラしたり、不安定な様子を見せることに気づきます。セラピーが始まって半年、自分の気持ちを表現することのなかったI子が、生活でのストレスを吐き出すようになります。

 

関係性ができてきていると感じた心理療法士は、I子の様子に配慮しながら、家族や過去について少しずつ介入していきます。

 

例えば、サンドバックを殴りながらストレスをぶつけるとき、心理療法士はI子に「ためている思いを言葉にしてみる」ことを促します。すると、これまでの「良い子」だったI子からは、思いもつかないような言葉が爆発します。殴り終わった後、とてもすっきりした様子で、いきいきと生活に戻っていきます。

 

心理療法士は、生活でのストレスや不満の先に過去や家族へのそれがあり、まずはそこを十分に吐き出したあと、過去や家族について語り始めることを見通していました。次第に、I子は家族への思いを語り始めます。

 

虐待をしていた継父への憎しみや、「継父は家族ではない」という思いが爆発します。やがて、守ってくれなかった母親への怒り、継父と母親の間に生まれた義妹への羨望、そして過去にさかのぼり、母親と離婚した父親への怒りなど、箱庭やプレイで表現します。

 

そして中学生になったI子は、母親との手紙、父親との面会を拒否します。「今は自分のことに集中したい」「静かに考える時間がほしい」とはっきりとその意思を言葉にします。

 

 過去に対する思いの吐き出しが回復への第一歩
I子の回復の道のりは、始まったばかりです。これから先も、心理療法や生活場面で吐き出された複雑な思いを、ひとつひとつ丁寧に扱い、さまざまなアプローチで整理をしていきます

 

しかし、「良い子」の仮面を外し、こころの底にたまっていたヘドロのような感情を表出し始めたときから、I子は生活でもさまざまな場面で意欲を見せ、チャレンジするようになります。

 

虐待を受けた子どもたちは、過去や家族に対する思いを語ることを恐れています。けしてポジティブではないその思いを語れば、「再び家族から拒否されてしまうのではないか」、「こんなことを言ったらまた厳しい仕打ちが待っているのではないか」という不安恐怖があるからです。また、家族を否定する自分への自己嫌悪もあります。

 

こころが傷つき、未熟な子どもにケアを提供せず、子どもの成長を任せていれば、こころにたまった複雑な思いは混乱し、様々な問題行動に発展する可能性があります。過去から回復し、子ども自身が自分の可能性や力を見出すためには、安心できる場所や大人の存在とともに、そこで自分を表現できることが必要です。

 

見守る、受け入れると言葉で言うのは簡単ですが、職員は子どもが表現していることがどういう意味を持っているのか、その先になにがあるのかを見通しながら子どもとともに回復の道のりを支援しています。

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