虐待を受けた子どもが回復するとき〜感情の交流A〜

今回は、ネグレクトという虐待が、子どもの感情にどのような影響を及ぼすのか、子どもたちはそこからどのように回復していくのかについて見ていきます。

 

 ネグレクトの感情への影響
児童虐待防止法によると、ネグレクトは以下のように定義されています。

 

●子どもの健康・安全への配慮を怠っているなど。例えば、@家に閉じ込める(子どもの
意思に反して学校等に登校させない)、A重大な病気になっても病院に連れて行かない、B乳幼児を家に残したまま度々外出する、C乳幼児を車の中に放置するなど。
●子どもにとって必要な情緒的欲求に応えていない(愛情遮断など)。
●食事、衣服、住居などが極端に不適切で、健康状態を損なうほどの無関心・怠慢など。
例えば、@適切な食事を与えない、A下着など長期間ひどく不潔なままにする、B極端に
不潔な環境の中で生活をさせるなど。
●親がパチンコに熱中している間、乳幼児を自動車の中に放置し、熱中症で子どもが死亡
したり、誘拐されたり、乳幼児だけを家に残して火災で子どもが焼死したりする事件も、
ネグレクトという虐待の結果であることに留意すべきである。
●子どもを遺棄する。

 

児童福祉施設には、上記のような環境で育った子どもたちが多くいます。また、ネグレクトは他の虐待(身体的虐待・心理的虐待・性的虐待)も同時に行われていることが多く、感情が複雑に傷つき負っています。

 

A子は、生後まもなくからネグレクト状態にありました。両親はA子を置いて遊びに出掛け、A子の世話をほとんどしていません。

 

おなかが空いたり、眠かったりして泣いても、親は応えてくれません。親が家にいても、ゲームや自分たちのしたいことをしていました。A子は、自分が要求することにも応えてもらえないどころか、存在していないかのように扱われてきました。

 

他にも、周囲が楽しそうに過ごしているにもかかわらず、表情がなく、ぼんやりと過ごしていることもあります。人に嫌なことをされても、嫌だと訴えることなく、じっと耐えています。

 

このような環境で育つことによって、子どもは「大人は要求しても応えてもらえない存在」と認識し、不信感を強く抱きます。また、どんなに要求しても応えてもらえなかったことから、自分の意思を伝えることや自分を表現するエネルギーを失います。

 

 回復への道〜存在を認めてもらうことが大前提〜
ネグレクトは、子どもの心に「誰も自分のことを大切に思ってくれない」、「自分は存在していいのだろうか」という傷を残します。児童福祉施設で暮らしている子どもたちは、どのようにして、その傷から回復していくのでしょうか。

 

最も身近で、世話をしてくれるはずの親から放置されていた彼らは、施設にきて自分という存在の価値を探し求めます。育ちの影響から、積極的にかかわりを求めることは少なく、たいていは他の子のあとにくっついていたり、一人で過ごしていたりします。

 

彼らは担当職員が自分のことを見てくれているか、自分はここ(施設)にいてもよいかということを、職員の反応や雰囲気をじっくりと観察することを通して確認しています

 

しかし、施設には他の子どもも生活していますし、職員も仕事に追われています。自分からかかわりを持つことが少ない子どもは、どうしても後回しにされてしまうことがあります。やっと発した要求に、「ちょっと待ってね」の一言で、崩れてしまう子もいます。

 

「どうせ私なんて、いなくてもいいんでしょ」、「〇〇ちゃんの方がかわいいんでしょ」と言葉にする子もいます。言葉にできればまだ良いほうです。「わかった」と言って、じっとこらえ、自分の世界に戻っていく場合もあります。

 

子どもが施設に居場所を見つけ、自分の存在価値が見いだせるために、職員は子どもの表情や変化を観察しながら、個や状況に合わせたかかわりをしています。子どもを年齢で判断したり、他児と比較したり、できないことばかり指摘することはしません。

 

言動だけで判断するのではなく、なぜそれが起きているのか、その背景を探ります。過去にさかのぼって理解に努め、今起きていることにどのように対応することが、子どもにとって有効であるかを考えています。

 

どんなに存在を認めてもらっても、彼らの根源にある「心の傷」は消えません。大きくなっても自分の存在価値が見いだせず、人からの愛を求め続ける子どももいます。しかし、心の傷は埋めても埋めても埋まらないこともあります。

 

子どもたちがこのような傷を負わないよう、大人や社会が、子どもを育てる視点を変える必要があります。また、施設や児童相談所の力だけでは、子どもの回復は望めません。社会全体の理解と支援が必要です。

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