サイト名 | キーワードを3、4つ書く

虐待を受けた子どもが回復するとき〜言葉を持つ力〜

虐待は、身体や心の発達のあらゆるところに悪影響を及ぼします。最近では、虐待により脳の萎縮が認められるという研究も発表されています。実際に、虐待を受けた子どもたちは、身体が小さく、感情のコントロールがうまくできないといったことが多くみられます。

 

彼らが暮らす児童福祉施設では、安心して安全に暮らせる環境を提供するだけでなく、こころの回復を目指す取り組み行っています。こころの回復を支援する、心理療法士という役割の職員が中心となって、子どもたちの生活を支援する現場の職員とともに行っています。

 

子どもたちは虐待からどのように回復していくのか、そこにはどのような支援があるのかを、「言葉」に注目して見ていくことにします。

 

 ケース〜N子〜
現在小学校4年生のN子は、母親からの虐待によって3歳のとき児童養護施設にやってきました。父親は仕事で忙しく、ほとんど家におらず、育児にも全くかかわりませんでした。

 

母親自身も、親からのネグレクトによって施設で育ったため、子育てのしかたがわかりません。周囲に相談できる存在もなく、ストレスのはけ口はN子に向かいます。

 

母親の一方的な感情で暴力を振るわれたり、放置されたり、かわいがられたりという繰り返しの日々を送ったN子は、施設に来た当初、表情がまったくありませんでした。職員が笑わせようとしたり、他児から嫌なことをされても能面のような顔をしていました。

 

施設の生活に慣れ、N子の成長もあり、少しずつ表情豊かになっていきました。しかし、小学校に上がっても、自分の気持ちを言葉で相手に伝えることは皆無でした。

 

N子が施設に来てから、職員の異動や退職により、現在担当しているS職員は3人目となります。S職員は、子ども一人ひとりに丁寧にかかわり、子どものこころを敏感に感じ取る職員です。子どもの気持ちが崩れそうになるとすぐにかかわり、救いあげることがとても上手です。

 

S職員が担当になり2年目に差し掛かる頃、N子はかんしゃくを起こすと止まらず、泣きわめき職員に暴力を振るうことが頻回に起こりました。そのたびにS職員は、「どうしたいのか」、「職員になにをしてほしいのか」と尋ねますが、N子はパニックを起こしたかのように泣きわめくばかりです。

 

S職員はチームを組んでいるほかの職員と心理療法士を集めて、施設内のカンファレンスを開きます。幼少期の家庭での母親からの虐待に加え、施設にきてから担当職員が数年単位で変更したり、同年齢の動きの激しい男の子にかかりきりで、N子は後回しにされがちだったという育ちの振り返りをします

 

「N子は自分の気持ちに目を向けられることが少なく、表現するよりも圧し込める方法を身につけてきたのではないか」と話し合われます。空気を察する力は高い一方で、感じたことをどうやって表現したらよいのかわからない結果が、「かんしゃく」という形で表現されているようです。

 

生活を支援する職員は、かんしゃくを起こしたときだけでなく、普段からN子が感じていることや考えていることを話す機会を意識的に持つことを共有しました。さらに、刺激の少ない安心した場所で、心理療法士とセラピーを始めることにしました。

 

それから半年、かんしゃくは見られず、イライラし始めると自ら職員に訴えることができるようになりました。また、日ごろから「自分はこう思う」、「今の自分はこういう状態だ」と表現できるようにもなっています。

 

さらに、表情も豊かになり学校の友達と遊ぶ機会が増え、興味のあることに挑戦したりと、意欲的な生活を送っています。

 

 言葉を持つ力
職員が意識したことは、「言葉を与える」ことです。N子は、自分の気持ちや状態を感じていても、それを表現する言葉を持っていませんでした。

 

まずは職員が「あなたはこういう気持ち(状態)なんだよね」と理解を示して言葉で伝えることによって、子どもは自分の気持ち(状態)を知ることができます

 

自分を表現する言葉を獲得するには、日々のきめ細やかな支援が必要です。自分という存在を放置されて育った子どもたちが、言葉を獲得する作業を通して、自分を認め、表現するという回復の道を自ら作っていきます。

 

どのような状態の子どもでも、ひどい環境を与えられてきても、子どもには回復する力があると信じて支援することによって、多くの時間がかかりながらも必ず回復につながっていきます。

スポンサードリンク


関連ページ

子ども虐待とはなにか
ここは空白でよい
子ども虐待とはなにか〜身体的虐待〜
ここは空白でよい
子ども虐待とはなにか〜性的虐待〜
ここは空白でよい
子ども虐待とはなにか〜ネグレクト〜
ここは空白でよい
子ども虐待とはなにか〜心理的虐待〜
ここは空白でよい
虐待を受けた子どもが回復するとき〜環境のちから〜
ここは空白でよい
虐待を受けた子どもが回復するとき〜環境づくりの工夫とその影響〜
ここは空白でよい
虐待を受けた子どもが回復するとき〜言葉のちから〜
ここは空白でよい
虐待を受けた子どもが回復するとき〜「良い子」からの解放〜
ここは空白でよい
虐待を受けた子どもが回復するとき〜生い立ちをたどる〜
ここは空白でよい
虐待を受けた子どもが回復するとき〜過去を表現する〜
ここは空白でよい
虐待を受けた子どもが回復するとき〜関係に変化が起きる〜
ここは空白でよい
虐待の子どもへの影響〜学習・学校〜
ここは空白でよい
虐待を受けた子どもが回復するとき〜衣生活〜
ここは空白でよい
虐待を受けた子どもが回復するとき〜食事〜
ここは空白でよい
虐待を受けた子どもが回復するとき〜住生活〜
ここは空白でよい
虐待を受けた子どもが回復するとき〜所属と承認の欲求が満たされるまで〜
ここは空白でよい
虐待を受けた子どもが回復するとき〜親の変化〜
ここは空白でよい
虐待を受けた子どもが回復するとき〜児童福祉施設職員との関係〜
ここは空白でよい
虐待を受けた子どもが回復するとき〜家庭の体験〜
ここは空白でよい
虐待を受けた子どもが回復するとき〜大人のあり方〜
ここは空白でよい
虐待を受けた子どもが回復するとき〜大人が先入観を外す〜
虐待を受けた子どもが回復するとき〜感情の交流@〜
虐待を受けた子どもが回復するとき〜感情の交流A〜
虐待の子どもへの影響〜存在を否認された過去〜

TOP 代表あいさつ お問い合わせ