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虐待を受けた子どもが回復するとき〜言葉のちから〜

虐待を受けてきた子どもたちを観察していると、大人の表情や言葉に敏感に反応し、大人の動きをよく見ています。それだけ数多くの言葉に傷つき、大人の微妙な表情の変化を察知して生きてきたということです。

 

大人ですら見逃してしまうような、小さな変化に敏感に反応する子どもたちが、どのように回復していくのか、言葉という視点から見ていきたいと思います。

 

 施設の生活から推測する子どもたちの傷つき
施設にいると、子どもたちが生活の小さなことにアンテナを張り巡らせて生きてきたことがわかる場面が多くあります。

 

職員が、事務的な用事やかかってきた電話の対応で、生活スペースから離れざるを得ないときがあります。すると、小さい子どもたちは「どこに行くの」、「すぐ戻ってきて」、「どのくらいかかるの」と尋ねます。じっと大人の動きを目で追っている子もいます。

 

このような様子から、親は自分を置いてどこかに行ってしまった、いつ帰ってくるのかわからなかった、ひとりぼっちで不安に駆られながら留守番をしていたといった過去の傷つきがあったのだろうと推測できます。先の見通しがつかないような状況になると、子どもたちはとても不安になります

 

施設職員も人間です。体調を崩したり疲れたり、感情が出てしまうことがあります。すると子どもたちは「大丈夫?」と声をかけたり、「僕が〜してあげる」とお手伝いをしてくれたりします。職員がなにも言わなくても、なにかを感じ取って、そっとお手伝いしてくれる子どももいます。

 

これらは、一般家庭でも見られる姿かもしれません。しかし、大きく異なる点があります。彼らには、親が疲れていたり、感情的になると、後々大きな爆発となり暴力を振るわれていた経験があることです。

 

親の感情の爆発を防ぐため、顔色や空気をいち早く察知し先回りして、自分ができることをするという能力が備わっていきます。単なる気遣いではなく、その先の暴力から身を守るために身につけた処世術と考えられます。

 

 少し先の見通しがわかることでの安心感
子どもたちの不安や過剰な気遣いは、少し先の展開が見えるだけで安心につながります。上記のような子どもの反応を理解している施設の職員は、用事があって数分でも子どもと離れる場合には「5分後に戻ってくるよ」、「〜をしに〇〇へ行くよ」、「一緒にいく?」、「お留守番できるかな」と具体的な言葉をかけるよう意識しています。

 

職員がイライラしたり、負の感情が表情や態度に出てしまっているとき、数分でも静かに気持ちを落ち着ける場所(宿直室など)に移動し、気持ちを整えます。また、一人で対応していて場を離れることが難しい時には、職員自身の状態を子どもが理解できるように、話せる範囲で伝える努力もしています。

 

大人の手伝いを積極的にしてくれる子は、職員も助かります。しかしその背景には、過剰に気を遣い、大人の顔色をうかがい、息を潜めるように生活している傾向があります。そういう子には、感謝の気持ちを伝えながら、「あなたがしたいと思うことをして良いのだ」ということを伝え続けます。

 

 言葉で伝えあう
虐待を受けた子どもたちは、自分の気持ちを言葉で伝えることがとても苦手です。親が子どもの気持ちに目を向ける余裕がなく無視をされたり、やっと発した言葉も、親の感情によって受け止められなかったという経験によるものです。

 

職員は、子どもたちがこころで感じていることを、言葉に変えられるよう意識して支援しています。言葉にすることに臆病だったり、過剰な気遣いや暴力という形で表現したりするときに「あなたは今こんな風に思っているんじゃないかな」とこころに寄り添います。そして「安心して言葉にして大丈夫だよ」というメッセージを伝え続けます。

 

このようなかかわりによって、子どもたちは「言葉」を獲得し、自分の言葉で発するようになっていきます。そして、言葉で表現できたことを褒められ、言葉を理解し受け入れてもらえたとき、子どもたちは少しずつ自分を回復していきます。

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