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虐待を受けた子どもが回復するとき〜所属と承認の欲求が満たされるまで〜

人は、基本的で本能的な欲求が満たされると次の階層の欲求を求め、安心で安全な暮らしが確保されるだけでなく、社会的な欲求と承認の欲求が満たされることも必要であるアメリカの心理学者マズローは説きました。

 

今回は、マズローの欲求階層説とともに、子どもたちの社会的な欲求と承認欲求が満たされることが、虐待からの回復とどのように関係しているのかについて考えていきます。

 

 マズローの欲求階層説
マズローは孤独な少年時代を過ごした背景から、リンカーンやスピノザなどの本を読んで育ちました。大学では行動主義を学び、研究を進めます。そこで従来の心理学が、人間に対する理解を深めたものの、人が心理学的に健康で成長へと向かう側面については目を向けられていないことに気づきます。

 

彼は、全体的な人間理解が必要だと主張します。健康で成熟した成人を対象に、心理的な健康について深めたのが、自己実現の研究だと言われています。

 

マズローは、人間の欲求には5つの段階があると言います。生理的欲求や安全が十分に感じられると、愛情と所属の欲求の段階にステージが上がり、それらが満たされて初めて、自己実現へと向かうための成長欲求が働くとしました。

 

 虐待からの回復と4つの段階
●第一〜生理的な欲求〜
生きていくための基本的で本能的な欲求(睡眠、食事等)のことを言います。施設で暮らす子どもたちの多くが、この欲求が満たされていませんでした。安全どころか、命がおびやかされてきた子どもたちには、最優先で提供しなければならないのがこの段階です。

 

安心して眠れるかどうか、ごはんが食べられるかどうかではなく、今日も明日も安心して眠れてごはんが食べられるという確証が得られることが大切です。そして、毎日同じことが繰り返しやってくるという実感を得られると、次の欲求へと進みます。

 

●第二〜安全欲求〜
安全に安心して暮らしたい、危機的なことから逃れたいという欲求です。第一の生理的な欲求が継続的に、安定して提供されること(満たされていること)を示します。

 

例えば、今日と明日は安心して眠れても、明後日以降、あるいは1か月先にはその保障がないという不安がないことです。この先もずっと今の安全が続くという実感を持てることです

 

施設では、安定した環境を提供し続けられるよう、基本的な衣食住の確保は当然のことながら、職員の人材配置や子どもの入退所にも配慮をしています。

 

●第三〜社会的な欲求〜
自分自身が満たされると、次は集団や仲間を欲します。ここが満たされないと人は孤独や不安を抱えます。

 

施設や学校、友人関係で、自分をとりまく集団に所属し、そこでの人とのこころの結びつきを求め、「そこにいてよいのだ」、「ここにいる意味がある」という自分の存在価値を求めます。

 

しかし、それまでの段階で自己を傷つけられ、人や周囲への不信感、自分をコントロールする力の欠如を持たざるを得なかった子どもたちは、この段階で大きなつまずきをします。集団をかき回したり、周囲に嫌悪感をもたらしたりと、注意を受けることばかりしてしまいます。

 

結果的に自尊心は傷つき、被害感や孤独感を抱きます。これらは自然に消えることはなく、むしろ蓄積され、次第に膨らんでいくため、問題行動は増大します。すると、施設職員や学校の先生からも排除されてしまうという悲劇を招いてしまいます。

 

このような悲劇が起きると、子どもにとって施設は、安心安全な場所ではなくなります。これを防ぐために、職員は子どもがした行為については叱るものの、子どもを否定せず、失敗しても許される体験、失敗しても再びチャンスがある体験の機会を作っています。

 

●第四〜承認の欲求〜
だれかに認めてもらいたい、尊敬されたい欲求です。施設の子どもにとっては、「自分がどんなことをしてもわかってくれる人がいる」、「自分の居場所がある」と実感できることです。それには前述したような職員の忍耐強いかかわりと存在が不可欠です。

 

マズローの欲求階層説の視点から、虐待を受けた子どもの回復について見てきました。このプロセスを経て、子どもたちは自己実現に向けてようやく足を踏み出すことができます。しかし、この四つの欲求が満たされるまでには膨大な時間とエネルギーを費やします。

 

施設にいる間だけで満たされ、回復する保証はありません。しかし、限られている時間の中で自尊心を育み、自分の人生を歩んでいく力をつけられるよう、施設職員は日々格闘しています

 

この先の欲求、自己実現にどう向かっていくのか、それについては別の記事で見ていくことにします。

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