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虐待を受けた子どもが回復するとき〜親の変化〜

虐待によって家族と離れて児童福祉施設で暮らしている子どもたちが最も気になることは家のこと、親のことです。「家はどうなっているのか」、「お父さんお母さんはどこにいて、なにをしているのか」、「いつ会いにきてくれるのだろう」と、こころの中は常に渦巻いています。

 

思いは常に抱いていても、言葉にすることは多くありません。施設には多くの子どもが暮らしていて、楽しいことも嫌なことも様々起こるため、頭の片隅にはあっても、意識にないときもあります。

 

あるいは、施設にくることになった細かい事情は知らなくても、お互いに「家で何かたいへんなことがあったからここにいる」という、子ども同士にしかわからない「同じ境遇のつながり感」というものがあるのかもしれません。

 

子どもたちが、家庭で起きたことを言葉にする場面があります。夕食時にふと、誰かが「家でこんなことされた」という話を始めると、次々に「私も」、「僕はもっとひどかった」などと始まります。そんな日の夜寝る前、職員が寝かしつけをしていると、幼い子どもが「ママ、どこにいるの」とつぶやくことがあります。

 

また、夏休みや年末年始になると、親と交流のある子どもは、家庭に外泊に出かけます。帰れない子どもたちは、その理由が分かっていても、過去のことや親のことを考える大きな刺激になります。残された子どものこころは揺れます。

 

児童相談所や施設では、親が子どもと会ったり、出かけたりできる程度に回復したり変化が起きれば、子どもとの交流を実施するよう支援しています。

 

久しぶりに家族と再会するとき、子どもたちはどのような気持ちでいるのでしょうか。また、この日は子どもだけでなく、施設や児童相談所にとっても大きな通過点です。それまでにどのような準備をしてきたのでしょうか。

 

再会の日に向けて、そして再会を迎えて、親の変化が子どもの回復にもたらず影響について見ていくことにします。

 

 ケース〜T子6歳〜
T子の母親は、まだ22歳でした。生活費を稼ぐため、T子を家において仕事に出かけたり、時々男性を家に連れてきたりしていました。T子が男性から虐待を受けていたことがきっかけとなり、4歳のときに施設にやってきました。

 

母親のT子への思いは強く、T子が預けられた直後から「引き取りたい」と口にしていました。思いはある一方で、生活は改善せず、T子を虐待した男性とも関係が続いていました。児童相談所は「この状態ではT子と交流させることは難しい」と判断し、生活の改善も含めて母親の支援を続けます。

 

T子との交流を目標にして、母親の思いが途切れないよう、まずは母親と施設職員が話す場を作ります。そこで生活の様子を聞いたり、写真を見たりする時間を重ねてきました。

 

T子の様子を聞くと同時に、母親のこころも揺れ動きます。母親は、自身の育ちや子育ての孤独感、男性との関係など、あふれる思いを話始めます。児童相談所の職員は、丁寧に耳を傾けます。

 

次第に、母親に変化が見え始めます。以前から抱いていた「引き取りたい」という思いだけでなく、実際に引き取るために行動に移し始めます。

 

男性と別れ、T子がいつ帰ってきてもよいように、2DKの家に転居します。これまでは大人の一人暮らしの家でしたが、子どもも暮らせるような雰囲気になってきました。

 

T子が母親と離れてから一年半後、児童相談所での再会が実現します。前の晩、職員からこれまでの経緯とともに再会を伝えられたT子は大喜びします。しかし、内心では「本当にお母さんは来るのだろうか」、「自分を虐待した男性も来るのか」と不安も抱き、職員に打ち明けます。

 

当日、面会前に職員は、前日のT子の様子を児童相談所に報告し、共有します。万が一のことがあった場合には、すぐに児童相談所の心理のスタッフがケアにあたる体制を整えておくためです。

 

面会の瞬間、母親はT子を抱き寄せて「ごめんね」と謝ります。T子は、ぽかんとした顔をしていますが、確実に母親の変化を感じとったようで小さくうなずきます。ここから、T子と母親の定期的な面会が始まっていきます。

 

 回復のはじまり
どんなにひどいことをした親でも、子どもにとってはたった一人の親です。自分から切り離すことはできません。小さなころは追い求め、思春期に入ると拒絶や否定をしたとしても、子どもの中には親の存在が必ずあります。

 

施設にくるということは、親と離れて暮らすことです。しかし、親との関係を切り離すことではありません。児童相談所や施設は、離れた親子が再びともに暮らせる可能性を探ります。

 

親が変化するのは、子ども以上に時間とエネルギーがかかります。子どもへの気持ちが途切れないよう支援するには、知恵と工夫と信頼が必要です。

 

親と再会する瞬間、子どもはうれしいだけではない、今まで味わったことのない、わけのわからない感覚を抱いています。親の変化、それは親がきちんと自分をまっすぐ見てくれているまなざしを感じられることといえるかもしれません。

 

虐待の心配がない、安心した施設の暮らしのさまざまな場面を通して、子どもは回復の機会をとらえます。親からまっすぐで、あたたかなまなざしを受け取ったとき、真の子どもの回復は始まっていきます。

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