虐待を受けた子どもが回復するとき〜大人が先入観を外す〜

虐待を受けている子どもは「お前はダメだ」、「良い子にするため、しつけのためにやっているのだ」というメッセージを一方的に受けています。その結果、子どもは非常に低い自己価値を持つようになります。

 

激しい虐待行為による低い自己価値は、子どもの中に「自分は悪い子」、「存在する(生きている)意味がない」、「生まれてきた意味が分からない」、「自分はいてもいなくても同じ」という認識を作ります。

 

虐待を受けることによって、脳の萎縮も認められるという結果も発表されています。そのほかにも、動きが激しい、集中ができない、暴力が止められない、何度も確認作業をするといった、子どものあらゆる言動、精神に悪い影響を及ぼします。

 

上記のような認識や言動を身につけた子どもは、育ちのなかで回復をする必要があります。その際に出会う大人が、彼らにどのようにかかわることが大切か、「先入観」という視点から見ていきます。

 

 虐待を受けた子どもたちをどのように理解していますか
あなたがもし、虐待を受けた子どもを目の前にしたとき、どのように感じるでしょうか。あるいは、目の前にしている子どもが、児童福祉施設で暮らしていると聞いたら、どのような気持ちになるでしょうか。

 

以前、数人の知り合いに聞いたことがありました。すると返ってきた言葉は、「かわいそう」、「こんなにかわいい子を虐待するなんで、ひどい親」、「どうやって接したらいいのかわからない」、「いつ感情が爆発するかわからない」、「かかわるのが怖い」といったものでした。

 

 大人や社会の先入観によって子どもは傷を深める
多くの人たちが上記の言葉を口にするでしょう。これらの背景には、虐待や、子どもの問題行動の一面だけを取り上げたり、虐待をしてしまった親の悪いところばかりを報道するといったマスコミの影響も考えられます。

 

子どもたちは、大人の顔色や声色、自分が発した言動に対する反応によって、目の前の大人が自分のなにを見ているのかを見抜く力にたけています。それは、虐待を受けてきた背景や、児童福祉施設の集団生活のなかで、身につけた処世術かもしれません。

 

大人や社会が「かわいそうな子」、「怖い子」という先入観を持っていることを、子どもたちは鋭く見抜きます。なぜならば、はじめの一言やまなざしから、彼らはそのメッセージが持つ意味を理解できるからです。

 

仮に、あなたが虐待を受けたり、施設で暮らす子どもの立場になって考えてみてください。「本当の自分は違うのに」、「これは自分が好きで作った一面ではないのに」、「暴力だって本当はしたくないのに」という思いでいっぱいになるでしょう。

 

彼らはまだ子どもです。大人と違って、本心や本当の自分を説明して、相手に納得してもらう術を持っていません。周囲の先入観に対する抵抗や怒りが、さらなる「問題行動」につながることが多々あります。

 

一方的な先入観で理解され、かかわりを持たれるということは、大人であっても理不尽に感じ、怒りを覚えます。虐待や児童福祉への理解がまだ浅い日本社会では、子どもたちの現実は、常にその繰り返しです。そのたびに、傷ついた子どもたちは、さらに傷ついていきます。

 

 先入観を外そう
児童養護施設で子どもたちと長年かかわってきて感じることの一つに、子どもはどの時代も、どの環境でも内面に持っている、子どもらしさという輝きや可能性は同じであるということです。

 

先入観というよろいを着た大人が関わることによって、内面の輝きや可能性を失わせてしまいます。「暴力を振るう子」というまなざしでかかわっていると、子どもへのかかわり方も、暴力を振るわせないような注意や、先回りした言葉が多くなります。

 

また「かわいそうな子」として見ていると、大人はなにもかも手伝い、与えてあげます。結果的に、子どもは自分で歩く力を持ちません。「してもらって当たり前」という感覚を持ち、与えてもらったことに感謝の気持ちが生まれません。

 

その子が持っている子どもらしさを理解し、すべての子どもに無限の可能性があると信じてかかわることが、子どもに回復の道筋を与えます。たとえ、今暴力を振るって落ち着きがない子どもがいたとしても、10年後には違った姿になっていることを信じ、待つという姿勢が大人に求められています。

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