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虐待を受けた子どもが回復するとき〜児童福祉施設職員との関係〜

児童福祉施設の職員のこころは、常にとても複雑です。親ではないけれど子どもと暮らしを共にし、成長を自分のことのように喜び、ときには本気で叱るというのは、他には類をみない仕事、役割です。

 

暮らしをともにしている存在でありながら、子どもと保護者の間に入ることもあります。普段の子どもを最もよく知り、深いところでつながっています。しかし、現在は離れている親子を見届けたり、親子関係の再構築に携わったりすることは、とても高度なセンスや技術を求められます。

 

2歳から18歳までという長い期間、そして最も子どもに変化がある時期を見守る児童福祉施設は、子どもにとっても、もちろん職員にとっても、親子とは違う、深い関係を築く時間となります。

 

子どもが施設にいる間、同一の職員がかかわるということが理想的ですが、施設や職員の事情によって叶わないことがあります。筆者の経験上、かかわった時間の長さではなく、密度の濃さによって違いがあるように見受けられます。

 

ここでは、子どもと職員の存在は、子どもにとってどのように回復につながっているのかについて考えていきます。

 

 子どもにとっての職員の存在とは
子どもと話していると、施設にやってきてから、誰がいつの時期に担当だったかという、担当の歴史のようなものを聞くことがあります。

 

歴史を振り返るとき、どの子どもも「この人が一番よかった」、「あの人は嫌だった」と職員を評価することは言いません。「こんなことしてくれた」、「あんなところに連れてってくれた」と、自分にしてくれたことをたくさん話します。

 

もちろん、場面によって職員には「○○さんが一番いい」、「ずっといてほしい」と甘えたり、思春期になると「お前なんか辞めちまえ!」と反抗することはあります。

 

成長とともに変化する甘えや反抗を繰り返しぶつけ、職員もそれに翻弄されたり、動揺したりしながら、日々の暮らしの中で関係は築かれていきます。子どもが施設にいる期間の中で、最も長くかかわった職員は、お互いにとって大きな存在となります。

 

また、子どもの心が揺れ、それが行動に表れる困難な時期があります。例えば、親との関係に希望が見いだせなくなったとき、自分の生い立ちを振り返って苦しいとき、わけのわからない不安が襲い、不安定の日々を過ごしたときです。そのときを共にした職員と子どもの関係は、期間の長さにかかわらずこころに刻まれます。

 

子どもにとっては実の親ではありませんが、社会の大人とは違う、深く自分を知っている存在としてうつっているのかもしれません。

 

 「大人が自分をまもってくれる」ことが当たり前の感覚になるこが回復につながる
施設で暮らしを共にしている間は、お互いに、特に子どもにとっては「いて当たり前」の存在という認識でしょう。むしろ、あれこれと口うるさい存在で、「管理されている」、「早く解放されて自由になりたい」と思う子どものほうが、多いかもしれません。

 

ケースにもよりますが、子どもと職員の関係は、子どもが施設を退園し、自立してから生かされている印象を受けます。

 

生活のすべてをひとりでやらなければいけない環境に置かれ、仕事や社会での人間関係の調整も自分でしなくてはなりません。頼ったり、相談できる人がいなくて困ったとき、孤独を感じたとき、子どもは施設や職員を頼りにします。

 

職員は、退園後でも子どものことを常に気にかけています。誕生日にはお祝いのメッセージを送ったり、食事をしたり、引っ越しや公的機関での手続きがわからなければ同行することもあります。

 

施設から自立をして、少し大人に近づいた子どもたちからは「あったかいごはんが出てくるのが今思えばありがたい」、「いつでも相談できる大人がいたあの頃はよかった」と話します。

 

施設職員は、ひとりの子どもに特別な何かをしているのではありません。今、自分たちができる最大限の知恵や工夫を絞り出して、子どもにとって必要なことを、日々淡々と提供している、その繰り返しです

 

ともに暮らしていた時間が、自分にとってどうだったかという意味を、あとになって子どもが見出してくれることもあります。

 

施設の職員は、カリスマ性があり素晴らしいスキルを持っているということよりも大切なことがあります。子どもが、いつも自分の近くに誰かがいると感じられること、大人が自分をまもってくれることが当たり前だと感じられることを提供できることです。目には見えませんが、そのような積み重ねが、子どもの回復につながっていきます。

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