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「虐待をしている親」を批判しても、解決は生まない

少子化や情報化に伴い、子育てへの関心も強くなる一方です。男性が積極的に育児に参加することを応援して、イクメンという言葉も生まれています。子育てに関する情報を簡単に手に入れられる一方で、不安をあおるような情報も溢れています。

 

子どもを施設に預けることになった背景要因の多くは虐待ですが、虐待に至る過程や要因を見ていくと、親自身の課題だけではありません。子育てにかかわるさまざまな実態が見えてきます。今回は、施設に子どもを預けている家族や親たちを通して、現代の子育てについて考えていきます。

 

 「私の話はだれが聞いてくれるの」
虐待により、施設に子どもを預けることになった30代半ばの母親です。子どもは、乳児期から落ち着きがなく、幼稚園でも問題ばかり起こし育てにくさを強く感じていました。さらに、夫からのDV(ドメスティックバイオレンス)も重なり、精神的余裕がなく感情に任せて子どもへの暴力に至りました。

 

施設に預け、子どもが少しずつ大きくなり、施設の支援によって安定感も出てきました。母親自身も、夫と離婚し、少しずつ心の落ち着きを取り戻し、パートにも出られるようになりました。「いつか子どもと再び一緒に暮らしたい」と願い、子どもとは定期的な交流を積み重ねています。

 

施設に足を運ぶたびに、施設の職員が声をかけてくれたり、母親の話を聞いてくれたりします。当初は、施設のことをあまりよく思っていなかった母親も、次第に信頼を置き、心の内を明かせるようになりました。

 

あるとき、子どもが他児とケンカをしてケガをさせてしまった、という報告を受けます。母親は、子どもが小さい頃の育てにくさや、虐待に至った経過を語り始めます。

 

「絶対に手を出してはいけないことはわかっていた」、「何度口で言い聞かせても言うことを聞かない子ども。自分は子育てが下手な母親、ダメな母親なのだと思うようになった」と語る過去には、近所に相談できる親や親族がいなかった苦しみがあります。さらに、転居したばかりの土地で、すでに出来上がっている母親同士の集まりには足が向かなかった孤独感がにじみ出ます。

 

夫からの暴力も、母子を家の中に引きこもらせる大きな要因でした。「アザのある顔で外には出られない」、「どうして自分はこんなに苦しい思いをするのだろう」と死を考えたことも話します。唯一の救いであった子どもにも、ついに手が出てしまいます。一度出てしまうと、糸が切れたように止まらなくなります。後悔と自責の念の繰り返しの日々でした。

 

子どもが施設に預けられ元気に育っていく姿を見て、嬉しさでいっぱいです。その一方で、「自分だけが取り残されていく感じ」があり、「私の話はだれが聞いてくれるの」という思いがつのり、「とても寂しかった」と打ち明けます。

 

 苦しい状況にある人たちへの視点を変えよう
母親の語りから、さまざまな背景が見えてきます。インターネットやSNSには、母親サークルやサロンといった集まりが、とてもたくさんあります。実際に、母親をしている人たちが中心となって活動しているものもあります。

 

公的機関やチラシにも、困ったら相談する大切さがうたわれていたり、緊急の電話番号が書かれていたりもします。

 

しかし、それらに足を向けたり、ほんの一歩の行動ができずに悩んでいる人が多くいるのも現実です。「相談に行きたい」と思っていても、経済的な理由で断念する人もいます。メディアで、素敵に輝くママたちが大々的に取り上げられるのを見ながら、彼女たちはさらに自信を失っていきます。

 

虐待は、母親だけの問題ではありません。社会からの孤立は大きな要因の一つですし、苦しい状況にある最中に相談できる人がいない孤独さもその一つでしょう。事例の母親が施設職員に語ることができたのは、施設職員が偏見を持たず、ふつうに接していたからにほかありません。
 
「虐待をしている母親」ではなく「子育てに苦しんでいる母親」、「一人で頑張っているお母さん」という視点に変えることで、救われる人たちが多くいます

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