思春期の子どもを持つ保護者とカウンセリングをしていると「子どもが何を考えているのかわからない」、「ふだんの会話がない。どう対応したらいいのか迷う」という相談を受けることがあります。

 

毎日同じ屋根の下で暮らしをともにしている親が、自分の子どものことがわからないのに、カウンセラーだからといって、会ったこともない子どものことがわかるはずはありません。

 

だからといって「あなたの子どものことなどわかりません」と返すことは絶対にしません。

 

カウンセラーは話を聴いて、何を目指しているのでしょうか。ここから、ヒントが見つかるかもしれません。

 

カウンセラーがしていることは、大きくは次の二つです。

 

親が子どもと関わるための道筋を見つけること、子どもに対して向けていた目線を変えることで新しい気づきを得られることです。

 

ここでは、事例を見ながら、親が「自分の子どものことがわからない」と感じたときにできることについて考えていきます。

 

それまでの親の関わり、子どもへの目線が、カウンセリングの中でどのように変化したかに注目してみてください。

 

 「高校2年生の息子のことがわからない」H夫婦
H夫婦は、高2の息子がある日突然、学校に行かなくなってしまったことで相談にやってきました。

 

たいていは母親が一人で相談に来ることが多いのですが、この日、父親は会社を休んだとのことでした。

 

カウンセラーは、H夫婦が子どもに対してともに考えることができる、対等で協力しあえる関係を築いていると感じました。

 

そのため、両親それぞれに息子の育ちについて語ってもらうことにしました

 

息子は1年生のころは遅刻もせず、むしろクラスで一番早く登校するほどだったようです。また勉強にも熱心に取り組んでいたと言います。

 

話を聞いていくと、中学校2年生から卒業するまで、不登校だったことが判りました。難しくなっていく勉強についていけなくなったことがきっかけだったようです。

 

さらに話を聞いていくと、父親が「病院に行っていないので診断は受けていないが、おそらく多動とかそういう障害なんだと思うんです」と言います。

 

幼稚園のころから落ち着きがなく、運動会でも集団とは違う動きをしたり、小学校に入ってもクラスになじめなかったと言います。

 

そのような息子に対して両親は、自分たちが伝えたいことが伝わらないため、叱ってばかりいたこと、落ち着きがなさすぎるときには叩いて言うことを聞かせていたと言います。

 

さらに、小学校高学年のある日、息子が両親に対して「僕はもう何も言わない」と言ったことなどを思い出して語り合います。

 

 語りの中から両親が気づいたこと
その後しばらく、両親はカウンセラーを前にして自分たちの子育てを振り返っていました。

 

カウンセラーは、これまでの両親の子育てについて否定したり、咎めたりすることなく、むしろ両親の苦労に共感し、そのときの両親の努力や工夫をねぎらいました。

 

カウンセラーは、両親のこれまでの努力の中に少しだけ足りなかった視点があることに気づいていました。

 

しかし、両親が気づくための質問を重ね、待ちます。

 

父親が感じていたような多動傾向があったとしたら、クラスや集団になじめない自分を、当事者である息子はどのように感じていたのか、両親の対応を息子はどのように感じていたのか、問いかけます。

 

すると両親は「私たちは、一方的に自分たちの価値観を押し付けていたのかもしれない。息子のことがわからないというのは、息子が私たちの枠にはまらないからわからなかっただけ。自分たちの価値観を息子に理解しろと言いながら、息子の価値観を理解しようとはしていなかった」と気づきます

 

 

 「わからない」の中身をとことん言葉にしてみよう
子どものことがわからないと感じたとき、まずは何がわからないのか、言葉にしてみましょう。

 

そして、子どもが生まれたときからのそだちや、自分たちがどのように関わってきたのかを振り返ってみましょう

 

この作業は、関わりを反省したり、間違いを見つけるための振り返りではありません。これまでの関わりの「何を」「どのように」変えたらよいかに気づくためのものです

 

振り返る中で、後悔や罪悪感を抱くこともあるでしょう。それは、真剣に子育てに向き合ってきたからこそ沸き起こる感情でもあります。

 

大切なことは、その感情を否定せず、気づいたことを実際にやってみることです。そのことで、少しずつではありますが「わからない」が「わかる」に変わっていきます。

 

「わかる」に変わったとき、親子関係、夫婦関係、子どもの様子や反応など、なにかが変わっているはずです。

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